14〜星が泣く:11

指と指を絡ませ口元へ当てていたマリエルは、複雑な表情をしていた。寂しくも見えるし、嬉しくも見える。
<星の子の奇跡>の事か、と匠は察する。確かにマリエルにとっては複雑な心境だろう。
「信じるよ」
それから、お前の生まれ故郷だもんな、と付け加える。マリエルは少し安堵したようだった。
「ありがと。……でもどうしてかしらね……何で星の中に星が生まれなくちゃいけないのよ?」
匠はそれに対しての解答を持ち得てはいなかった。お互いに言葉を探して黙り込む。
しばらくして視線が重なり合った時、再びマリエルが口を開いた。
「理不尽な話……。でも──だから奇跡が起こるのよね」
「押さえつけられた反動か?」
「少し違う、かな。地球の中に生まれるこの星は一日しか生きられないのよ」
真下、岩を指差してマリエルは続ける。
「多分……短い命の中で少しでも生きた証を残したいんだと思う」
「それが<星の子の奇跡>……」
呟く匠に、マリエルは力強い瞳で首肯した。
「そう。そこから私は生まれたの。何が起こるかは分からない、星の子の奇跡。生態系は間違いなく狂うでしょうね。あんたのような能力者も奇跡の影響の結果なのよ。人間共は忌み嫌うけど、止めさせやしないわ」
「おう!」
匠は力強く頷いて返事をした。手を差し出すと、マリエルは少しためらってからその手を取った。
「私の故郷──ほら、聞こえてきたでしょう?」
手を握ったままでマリエルが目を閉じる。耳を澄ますと、遠くの海の波音のような、重い何かが迫り来る音が微かに匠にも聞こえた。
「これは……?」
「人間の言葉を借りるなら……胎動。誕生の音よ」
徐々に音が大きくなる。もう耳を澄まさなくても充分聞こえていた。それに伴って足元が大きく揺れ始める。
「おお……」
立っているのが困難なくらいに岩が、大地が振動する。匠とマリエルはしっかりと手を繋いで耐える。
ふと匠は周りの温度が上がっていることに気づいた。でも不思議と暑くはなかった。
疑問に思っていると、マリエルが微笑を漏らした。
「これは奇跡の温もり。気分はどう?」
「ああ……悪くない」
地鳴りと揺れがいっそうひどくなる。もう言葉は要らなかった。ただその瞬間を二人待つ。
一旦力を緩め、また強く握り返してくるマリエルを離すまい、と匠も手に力を込める。
岩に縦横無尽に亀裂が走る。

そして、薄紅色の光が溢れ出した。

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