15〜魔女vsがらくた(その4)

「くそっ!何で私が貴様に従わなければならないんだ!」
匠と凪に併走して走る後藤が悪態をつく。
その後ろには後藤の7人の部下達が、くの字型ーーフォーメーションDのままでついて来ている。
「あん、死んだフリなんてしてやがって、ぶっ殺されなかっただけでも有難く思え!」
匠達はマリエルを追って、ロックが破壊された鉄格子群を走り抜けていた。
「あとどれくらいだっけっ・・・」
走る足を休める事なく凪が匠に聞く。
「あと10個くらいだ」
息も切らさず匠が言った。
後藤の話によれば、鉄格子は50個あるらしい。そして1つ1つの間隔は20メートル程あった。合計約1km。
距離とロックの数がせめてもの救いだった。
「余裕で追いつける筈だ」
そう付け加える匠。
しかし、そう言う匠の顔には余裕など欠片も見当たらなかった。
相手が得体の知れない能力を持った魔女だからだろう、と凪は思った。
しかしーー
「っぐ・・・!」
突然隣を走っていた匠が倒れた。
「匠!?」
全員がその足に急ブレーキをかけ、匠に駆け寄った。
見た目はどこにも外傷はない。爆発に巻き込まれた筈の匠が平然と現れたのを見て、凪はまた常識では図れない何かで防いだ、と勝手に決め付けていたのだが、
しかし匠の顔は明らかに痛苦を伴っていた。
「やっぱあんた無傷じゃないんでしょ!」
傍にしゃがみこんで、凪は心配そうに匠の顔を覗き込んだ。
その時ふと、凪の視界の端に赤黒いモノが映った。
「匠っ!!やっぱり・・・」
凪は匠のじんべえをめくり上げた。
匠の背中を覆っているはずのTシャツがほとんどない。真っ白なシャツの代わりに焼け爛れた皮膚と、滲み溢れる血でいっぱいだった。
「・・・何とか断裂に飛び込んだから良かったものの、じんべえで顔を守ったまでで限界だったぜ。
・・・ったく、俺とした事が」
匠は平然を装いながらゆっくりと、立ち膝で深呼吸などしつつ、立ち上がった。
凪は静止の声を掛けようとしたが、言葉が出てこなかった。何て言えばいいのかが分からなかった。
「さあ行こうか」
そう言って走り出す匠に、凪は無言でついて行くしかなかった。
再びマリエルを追い始め、5つ程鉄格子を抜けた辺りで、周囲が明るくなってきているのに凪は気づいた。
鉄格子の奥にたいまつの明かりが見えてきたのだ。
それは地下空間の終わりを示していた。そして、凪の姉もそこにいる筈だった。
やがてたいまつがはっきり見える辺りになって、鉄格子と同じく天井近くまでそびえる、一枚の巨大な観音開きの鉄扉がその姿を現した。
ジャンボジェット機ですら通れるんじゃないかというその幅に、凪は圧倒された。
「もしかしてこれをお姉ちゃんは封印してるの・・・?」
果たして人間1人の力で何を止めれるというのか、凪は疑問に思った。
だがその袂に正座しているのだろう、小さくなっている姉がいるのを見つけると、そんな考えも吹き飛んだ。
凪は歓喜の声を上げかけたが、そのすぐ横にマリエルがいたので、何とか声にするのをぐっと押し留めた。
どうやらマリエルは何かを語り掛けているらしい。

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