13〜魔女vsがらくた(その3)

彼らが平行線の対立を続ける中、凪は1人呆然と佇んでいた。
やっぱりーー。
私がお姉ちゃんの元へ行っただけで、お姉ちゃんが封印してる何かーー
母胎門、は解き放たれちゃうの・・・?
もしそれが本当に脅威なモノだったらーー
凪は冗談抜きで自分がこの町の行く末の一端を握っている、そんな状況に身を振るわせた。
それに、マリエルの言っていた事も気になる。
「私はどうしたら・・・」
呟くだけで無力な自分に、歯を軋ませて凪は姉がいるだろう鉄格子群の奥を見つめた。
「お姉ちゃんーー」
呟く凪。
それでもーー。
彼女は会いたい気持ちを振り払うかのようにかぶりを振ると、再びマリエルを見据えた。
今やるべき事は、決まっているのである。
姉を殺すと言った、この魔女を追い払う。
「今は何も考えない・・・」
そう、凪は自分に言い聞かせた。


「さあ、ひたすら死に急ぎなさいっ!!」
マリエルがまた、爆発の魔法を生み出したのだろう。
遠くの薄闇に赤い光が輝き始めた。逆光でマリエルの姿が掻き消える。
「スプレッド・ローゼスっ!!」
匠に向かって赤い光が高速で迫り来る。視界はどんどんと赤一色に埋め尽くされていき――
「四散しないだとっ!?」
その瞬間、匠は殺気を覚え思いっきり後ろ蹴りを放った。
目に飛び込んできたのは、威嚇をする猫のようなポーズのマリエル。
避けられた――――?
「ウィスプ・ヴァイン!!」
いつの間にか背後にいたマリエルが、伏せた体勢から斬り上げるように光の鞭を振るった。
「があっ!」
胸を抉られる感触と共に、匠の身体が宙を舞う。
マリエルは逆光で見えなくなる事を利用して、いつの間にか背後に回っていたのだ。
しかも、それに反応して匠が繰り出した蹴りすら、予測して避けたのだ。
「これで、終わりよ」
囮に使われた赤い光に向かって匠をふっ飛ばしたマリエルが、トドメにその光を炸裂させた。
3度目の紅い薔薇の轟音が、光と熱を撒き散らす。
「さよなら、がらくた」
膨れ上がる炎を見つめながら、マリエルは1人、呟いた。

「匠ーっ!!」
爆発が起こった場所を中心に、マリエルと丁度反対の位置。
凪は声が掻き消される事を拒むかのように、爆心に向かって叫び続けていた。
(全然、あんたにいい印象なんかなかった。でも、助けてくれるって……)
「嘘・・・だよね?匠ーー」
だんだんと沸き起こる感情は悲しみではなかった。
孤独感と、絶望感。
(あんたお姉ちゃんを助けてくれるって言ったじゃないーー)
「匠ぃぃぃ・・・」
凪は目の前の全ての道が閉ざされたような気がして、その場にへたり込んだ。
「ふん、やっぱり脆いもんね、人間なんて」
まるで自分が人間じゃないような言い方をしながら、マリエルは歩き始めた。
まだ燻っている爆発の跡にはもう目もくれない。
凪は近づいてくる魔女に危機感を覚えたが、あまりのことに力が入らず、立つことすら出来なかった。
殺される。
「いやーー」
絶叫しかけた凪だったが、魔女は凪に構うことなく通り過ぎた。
「そこで黙って見てなさい、戦力外」

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