12〜魔女vsがらくた(その2)

匠は目を細め軽く鼻で笑いながら、マリエルに見下すような視線を向けた。
「そう、愚かな事ね。
あんたも、あんたの奥にいる欠落巫女も」
マリエルは匠の後ろ、巨大な鉄格子群に目を向けて続けた。
「特に欠落巫女。自分の事しか考えてない、馬鹿な女ーー」
「何よっ!!お姉ちゃんの事何も知らないくせに!!」
姉の暴言を吐かれて、黙っていられなかった凪がマリエルに食って掛かった。
匠の傍を離れようとはしなかったが、それでも引けない部分ではある。
「お姉ちゃんはね、無理矢理この町に連れてこられたのよ!さらわれたの!
そんな事情も知らないくせに、知ったような事言わないでよっ!!」
「あらあんた、あの欠落巫女の妹?
そっかそっか・・・」
マリエルは含み笑いを遠慮もせずに漏らした。
「あんた、何も知らないのね」
そう言うと、いよいよマリエルは楽しそうに目を輝かせた。
「何・・・?お姉ちゃんは自分でここに来たっていうの!?」
涙を滲ませながら食い下がる凪にマリエルは、
横のがらくたに聞きなさい、と答えると再び手のひらに光の球を生み出した。今度は少し黄色い輝きである。
「とにかく!欠落巫女は邪魔なのよ!消させてもらうわ!」
そう言い捨て、マリエルは床を蹴って飛び込んできた。
「彷徨う燐火の蔓(ウィスプ・ヴァイン)!」
マリエルが生み出した光が鞭の形になって匠に襲い掛かる。
匠は凪を突き飛ばすと、上段からしなり来る光の鞭に対してペーパーナイフを横に構えた。
刹那の駆け引き。
鞭が刃に触れる瞬間、匠はナイフを持った腕だけを残して身体を反転させた。
ぎりぎりまで引きつけられたせいで、鞭は軌道を変える事ができずにナイフを粉砕するのみに留まった。
流れるように、そのまま裏拳をマリエルに繰り出す匠。
マリエルも先を読んでいたのか、前のめりに倒れこんでかわすと、前転して体勢を直す。
「スプレッド・ローゼス!!」
背後に位置する匠に手のひらだけを向けて、マリエルが光を放つ。
こればっかりは防ぎようがないらしく、匠が後ろに飛び退る。
またもや上手く爆風に乗る形で衝撃を和らげた匠だったが、随分と距離を離されてしまった。
「まずいな・・・」
匠はもう武器になるような物を持っていなかった。
乾電池は蓄えられた電力を一気に使い切ってしまっていた。
残されたのは自分の身体のみ、だったが、爆発の魔法を使われては近づくことすら困難だった。
「あの女まで、若様が守ってきたこの町の秩序を壊す気か・・・!」
後藤が苦々しく吐き捨てる。
「心配すんなハゲ、あいつは俺がぶっ殺すーー」
反撃できる可能性がかなり狭められた今でも、匠は余裕の表情を崩さなかった。
「貴様も秩序を乱す1人なんだ!」
「うるせえな、あのマリーの雪さんを殺す案と、
俺の雪さんに凪を会わせる案とじゃ、俺の方が絶対いいだろ!」
「それはそうだがーー」
言い淀む後藤に、
「結局、母胎門が開いちゃうかもしれないってのは一緒でしょ?」
とマリエルが付け足した。
「そう!その通り!」
「ハゲ、てめえどっちの味方だよ」
「どっちでもないわ!」

匠、後藤、マリエル。
目的のまったく違う3者。

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