11〜魔女vsがらくた(その1)

間にいた後藤が一目散にとばっちりを食らわないように逃げるのと同時に、匠も前に、光の球の方へ向かって動く。
先程と一緒なら、光の球はこの後四散して、爆発を起こす筈である、と踏んでの行動だった。
マリエルが指を鳴らす。
と、球は四散ーーしたものの、その全てが匠の方へと向かってきた。
「やべっ!」
球が四散するのを見越して先に駆け抜ける戦法だったが、どうやら任意の方向に散らすことができるらしい。
匠はとっさに垂直方向へ跳んだ。
「狂い咲く紅い薔薇(スプレッド・ローゼス)!!」
その言葉に反応して、光の球がその容量からは考えられない程の爆発を引き起こした。
爆風に乗って、そのまま10メートルはあろうかという天井に舞い上がる匠。
身を翻し、まるで地面のように一瞬着地し下を見る。
どうやら爆風は全て匠側に向けられていたらしく、他の者は無事のようだった。
「おおーきれいだな」
眼下に見える爆発の余韻は、マリエルが名乗った通り4つの紅い薔薇が散り行くようだった。
「さて」
一瞬の終わり、重力の戻る瞬間。
匠は天井を蹴り、10メートルの落下に更に加速をつけた。
「頼むぜ、アラジンちゃん」
匠は刃先が錆びてボロボロのペーパーナイフ
ーーペルシャチックなデザインーーを取り出すと、その刀身に愛しそうに口づけをした。
「せーのっ!」
爆煙の中の人影に向かって思い切り斬りつける匠。
大口径の銃で撃ったような音が響く。
「くそっ!」
手応えはなかったらしく、舌打ち1つ残すと匠は一旦後ろに跳んで距離を取った。
煙が晴れていく。
「はあ!?」
飛び込んできた現実に、離れて見ていた凪は自分の目を疑った。
マリエルの立っていた場所から10メートル程にわたって、巨大な断裂が伸びていたのだ。
天然の岩で出来ている床を匠は軽々と抉ったのだ。まるで高層ビル程の怪獣の爪痕のようである。
常人では考えられない離れ技を平然とやってのける匠を見て、凪はようやく理解した。
何故匠が余裕なのか。
何故後藤達がこんなに匠を恐れるのか。
常識は捨てようと誓っていた凪だったが、それでも全然彼女の予想が及ばない範疇だったのである。
しかし、これで終わった訳ではなかった。
相手のマリエルも匠と同じくらい常識を逸脱した力を持っているのだ。
「へえ・・・錆びたナイフでこの力とはね・・・」
断裂を紙一重で避けたらしいマリエルは、その淵に立って匠の事を興味深く見つめた。
「そうか・・・あんたが<がらくた>ね?」
「まあそう言われてるな」
匠は指先でナイフを回転させながら、笑って答えた。
「それはそれは・・・。何事にも無関心と言われてるらしいあんたが、どうしてこんな所にいるのかしら?
やっぱり、この町の行く末が気になるのかしらっ?」
滑稽だ、と言わんばかりにマリエルが高笑いを上げる。
「やっぱり皆さん、俺の事を誤解してらっさるよーですな。
俺は他の奴らが言うところの<がらくた>に関しては、この上なく興味があるんでね。だからここにいる」
「へえ・・・何ががらくたなのかしら?
母胎門?それとも欠落巫女?」
「さあね、教えてやんね」

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