20〜心理戦・凪:3   <出口は何処>

お姉ちゃんが生きているのなら助ける時の具体的な案等は匠がいるし、後で考えようと凪は考えていた。実際匠はマリエルに1度勝利しているのである。今現在だって次も余裕と言わんばかりの態度である。
ならば次は救出後のこの町からの脱出ルートである。雪が桐崎と婚約しているのなら一緒に帰るような事はないかもしれない。その場合は雪の無事が確認出来次第自分は帰るつもりだった。母胎門だのこの町の危機だの、凪にとっては知った事ではなかったし、第一自分がいてどうにかなるものでもない。なので、凪がこの町にいる理由というのは雪を救出した後はなくなるのである。
しかし理由があろうとなかろうと、桐崎が大人しくこの町から帰してくれるかどうかは秘密主義の町、という性質から考えて怪しいところだったので、用心しての二つ目の質問である。
「この町から出る方法を教えてくれる?」
桐崎を警戒してドアの方を見やりながら小声で言う凪。少しの間が緊張を誘ったが、どうやら杞憂だったようだ。
「紬町からの脱出ルート……ダウンロード開始──」
この間も今となっては怖くなかった。むしろどんな回答が得られるのか楽しみといったところである。
「脱出ルートは2つ……1つは片倉3丁目の工場街前のマンホールから……紬町の貨物搬入ルートへ侵入し……地下鉄東西線の線路に合流し東京へと戻るルート……」
それは凪が通ってきたルートだった。地下鉄の線路を通る大変危険なルートである。出来れば避けたいところだ、と凪は黙って頷いた。
「もう一つは……江戸川を何らかの方法で渡る……。この場合この町のセキュリティに引っかかる可能性が高い……」
なるほど、と凪は残念そうにうなだれる。泳ぐにしろボートなどを使うにしろ、桐崎に追われるのはもう勘弁願いたかった。
と、なるとやはり再び物資搬入ルートを使うしかないようである。
「あ、ありがと……」
溜め息が漏れる。この苦労を分かち合える相手がいないのがつらいところである。
「最後の質問を……」
先が質問を促す。ここに来て先は時々苦悶の表情を浮かべるようにまでなっていた。
どうやら時間が迫ってきているようだ。
「分かった、いくよ最後の質問」
こんな事を聞いていいのかと思いもしたが、好奇心に勝てない凪は口を開いた。
「どうして匠はお姉ちゃんを助けたいのかな?」
単純に好きだという理由からだろうが、それなら妹の自分にきつく当たるのはマイナス効果だし、と思う。計算して人と接する人間でもないだろうが。

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