18〜魔女vsがらくた(その7)

よく見ると、匠は隙を見ては凪に視線を送っていた。
(私に何かしろって事・・・?)
何が出来るのか。そして何がここにはあるのか。凪は瞬時に結論を出した。
「ねえおじさん、ライターない!?」
「ライター・・・?何に使うんだ」
「いいから早く!あるの、ないの、どっち!?」
凪にまで強気に出られた事が意外で、目を丸くした後藤だったが、自分のポケットを探るとやがて100円ライターを取り出した。
「貸して!」
後藤がライターを出すや凪はひったくると、祈りを込めるように両手で包んで目をぎゅっとつぶり、そっと手を開いた。
「やった!」
燃料が零に近く、スイッチを押しても火花が散るだけのライター。
これならいけるはず。
「匠っ!!」
凪は渾身の力を込めてライターを匠に投げた。
「いい加減死ね!!」
マリエルが赤い光を分散させずに匠に放つ。
「散り行く大輪の薔薇(ロスト・スプレッド・ローゼス)!!」
今までと比べ物にならない程の空気の歪みが匠に襲い掛かる。爆発以前に放射熱で身体が焼けそうだった。
しかし。
「よーし、分かってんじゃねーか」
間一髪、匠は空中でライターを掴むと、そのまま一回転してマリエルに突き出した。
「初めまして、ライターちゃん。そして・・・よろしくなっ!!」
左手で顔を防ぎつつ、目の前の光に向かって匠も力を解き放つ。
光と光がぶつかり合う。
爆発の音は、凪の耳には届かなかった。
いや、届いたのだろう。しかし、眩すぎる世界では、音を感じることが出来なかったのだろう。
無音の世界で、凪は匠の姿を光の中に捉えた。
ーー匠は笑っているように見えた。
子供のけんかだ、と凪は思った。駆け引きなどない、純粋な力の問題。
匠の炎が、マリエルの爆発より若干大きい。
そう、それはつまりーー
「うらあああああああっっ!!」
無音の世界が終わった。機能が回復した凪の耳に最初に届いたのは、爆発の余韻に混じった匠の声だった。
匠の炎が爆発を押し返すように、マリエルに向かってその牙を剥く。
ーーそして、炎が魔女を飲み込んだ。
悲鳴は聞こえない。
「終わったの・・・?」
元の明るさに戻り、段々と目が慣れてくる。凪は目を凝らしてマリエルのいた方を見た。
そこには、赤という色はなかった。魔女は消えたのだった。
「事態は深刻のようだ」
人事のように匠が呟く。
「あいつ、雪さんをさらいやがった」

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